柔(やわら)は一千数百年来伝承された日本独特の体技で、その基礎となるのは「柔らの理」である。
「柔らの理」とは相手の力を用いて攻撃してくる場合に順応して動作し、相手の力を利用して勝ちを制す理合をいう。
特に合気の術は、手・足・肩・胸などの五体のすべてに術があり、相手の力を利用したり、相手の力を抜いて逆をとり、
機に応じ態が現れ、千変万化、自由自在に相手を屈服させる術である。
大東流合気柔術の本質は、「斬らない」「斬られない」「殴らない」「殴られない」「蹴らない」「蹴られない」である。
・・・昭和26年2月「湧別広報」より
幸道会の技法に於いて特筆すべき点は、大東流合気柔術の柔術的側面のみならず、それをより深化させた精密な技法として、
堀川幸道先生より伝えられた合気の技にあるといえましょう。
900年余りの歴史ある大東流合気柔術が、実戦上での甲冑組み討ちの技から城内などでの殿中技へ、時代の変遷と共に
その中心技術を変化させてきたということはよく知られている事柄です。
幸道会の技は、その時代の要請に添いながら会津藩秘伝といわれる御式内の系統を色濃く反映している技法ということが
できると思います。
我々幸道会は、その中心的技術概念<合気>に彩られた歴史的遺産である秘伝的大系を研鑽し、後世に伝承してゆく事を
旨としております。
幸道会には、初伝として「大東流柔術秘伝目録」(百十八カ條)、中伝に「秘伝奥義之技」(三十カ條)、
奥伝に「大東流合気柔術秘伝奥義之手」(三十六カ條)の巻物が伝えられております。
幸道会では、それらを基軸としながら、多様で幅と奥行きを持った技法・技の型を錬磨・伝承しております。
大東流の技には、2880余手もの膨大な型があるといわれておりますが、これは大東流合気柔術が様々な攻撃に対処する
<護身>ということに主軸を置くが故に、必然的に多面的で奥の深い技法として展開された事を意味しており、先人たる
諸先生が、その多様な技の発揚という命題を研鑽・探求し、結実されたことの現れであると思います。
幸道会では、この多彩な技法を修練すると共に、<合気>の理合の内奥に照らし出される人格形成という事をも重視し、
切磋琢磨しております。